
タワーマンションの高層階は、眺望と引き換えに「夏は暑く、冬は寒い」という悩みを抱えがちです。管理組合や管理会社には、毎年決まった時期に同じ苦情が届いているのではないでしょうか。
これは住まい方の問題ではなく、高層階特有の「窓」の条件によって起こります。足場が組めない、窓が共用部分といった制約のなかで管理側が選べる対策を解説します。
結論:原因は「高層階の窓」。室内側から窓の性能を上げるのが現実解
- 暑さ・寒さの主因は、空調の能力不足ではなく「窓」にあります
- 高層階は、日射をさえぎるものがない・窓が大きい・窓が開けられないという条件が重なります
- 窓ガラスは多くのマンションで共用部分として扱われるため、施工には管理組合の承認が必要です。管理組合がすぐに動けない場合は、区分所有者が理事長の承認を得て、自分の住戸だけ先に施工することもできます
- 外部足場を組めないため、対策は「室内側だけで完結する工法」に絞られます
この条件を満たすのが、内窓の設置と、既存の窓ガラスに塗布する「節電ガラスコート」です。
タワーマンションの窓が暑い・寒い4つの理由
① 日射をさえぎるものが、まわりにない
低層階は隣の建物や街路樹の影に入る時間帯がありますが、高層階は朝から夕方まで直射日光を受け続けます。とくに南向き・西向きの住戸は、午後から夕方に室温が上がりやすくなります。「高いところは涼しい」というのは外気温の話で、熱のもとになる赤外線は高さに関係なく窓に届きます。
② 窓が大きい=熱の入口が大きい

眺望を重視した設計のため、床までの大きなサッシやFIX窓(はめ殺し窓)、ガラスカーテンウォールが多用されます。開口部の比率が高いということは、そのまま熱の出入り口が大きいということです。
環境省の資料によると、夏の冷房時に室内へ入る熱は窓が最も多く73%で、屋根11%、外壁7%、換気6%、床3%と続きます。冬の暖房時には、熱の58%が窓などの開口部から逃げています。窓が大きいタワーマンションでは、この割合がそのまま空調の負担として返ってきます。
出典:環境省「断熱リフォームで夏本番も快適に! おうちの暑さ対策のコツ」/同「窓の断熱リフォームから、暮らしの脱炭素を始めよう」
③ 窓が開けられない=熱を逃がせない
高層階は風圧が強く、落下防止の観点からも窓の開閉が制限されている、あるいはFIX窓で開かないケースが多くあります。24時間換気システムは空気を入れ替える設備で、こもった熱を排出する能力はありません。入ってきた熱は、エアコンで処理するしかない構造です。
④ 冬はコールドドラフトと結露が起きる
冬は大きなガラス面が冷やされ、そこで冷えた空気が下へ降りる「コールドドラフト」が起こります。設定温度を上げても窓際だけ寒い、という状態です。さらに気密性が高く室内の水蒸気が逃げにくいため、冷えたガラス面やサッシで結露し、放置するとカビや内装材の劣化、原状回復をめぐるトラブルにつながります。
状況別の判断チェックリスト
- 夏・冬に「暑い」「寒い」「結露する」の問い合わせが毎年繰り返されている
- 南向き・西向きの高層階から、とくに苦情が集中している
- 床までの大きな窓やFIX窓が多く、開閉が制限されている
- 窓まわりのカビや木枠の劣化について相談を受けたことがある
- 外部足場を組む工事は、費用面で現実的でない
- 竣工図でガラスの仕様(単板/複層/Low-E/網入り)を確認していない
3つ以上あてはまる場合、原因は個々の住戸ではなく建物の窓にあると考えられます。とくに最後の項目は、どの工法が使えるかを左右する前提条件です。
節電ガラスコートとは?

既存の窓ガラスの室内側に専用のコーティング剤をローラーで塗布し、遮熱・断熱・紫外線カット・結露抑制の性能を付加する工法です。ガラスもサッシも交換せず、内窓も設置しません。赤外線を約80%、紫外線を約99%カットし、冬の室内結露を約50%抑制します。防虫効果もあります。
居住者・運営への影響
室内側から施工するため、ゴンドラも足場も不要です。1住戸あたり最短半日で終わり、引っ越しや長期の立ち入りは必要ありません。共用廊下やエントランスなどの大開口部にも同じ工法で展開できます。
乾燥とにおい
表面は塗布後約1時間で乾き、翌日には触れる状態になります。完全乾燥までは約1か月です。施工中は除光液のようなにおいが発生しますが、半日から1日で和らぎます。
見た目・明るさ

透明タイプとすりガラス(型ガラス)タイプの2種類があります。透明タイプはわずかに青みがかる程度で、採光と視界を損ないません。タワーマンションを含む高層建物での施工実績があり、施工した住戸としていない住戸を外から見比べても、色味の差はほとんど分かりません。夜の外観では、住戸ごとの照明の色(電球色か昼白色か)の違いのほうが、はるかに目立ちます。色味や反射が変わるミラータイプのフィルムは、外観の変更にあたるとして管理組合の承認が下りないこともあります。外観をほとんど変えないことは、承認を得るうえでも有利に働きます。
施工できる窓
塗布式のため継ぎ目が出ず、大判ガラスやFIX窓でもガラス1枚を均一に仕上げられます。形状を問わず施工でき、フィルムが苦手とする型ガラス・磨りガラスにも塗布できます。
ただし複層ガラス(ペアガラス)や網入りガラスは、熱割れ計算を実施したうえで可否を判断します。高層階でのガラス破損は重大な事故につながるため、この事前確認は欠かせません。
費用の目安
13,200円(税込)/㎡ ※10㎡より、諸経費別です。10㎡以下の場合は一律132,000円(税込)※諸経費別となります。お見積りは無料です。
耐久・メンテナンス
耐久年数は15年以上で、貼り替えは不要です。日常のお手入れは水または中性洗剤での通常清掃で問題ありません。透明ガラスへの施工は剥離・塗り直しが可能なため、賃貸住戸やテナントでも導入できます(型ガラスなどテクスチャーのあるガラスは剥離できません)。
効果の裏付け

遮熱・断熱効果は、環境省の環境技術実証事業(ETV)をはじめとする第三者機関の試験で確認されています。自社試験ではない客観的なデータがあることは、管理組合の合意形成において重要な材料になります。
実証データでは、ガラスカーテンウォールを多用した高層オフィスビルで、ビル全体の空調電力を約12%削減できるという結果が示されています。窓面積が大きい建物ほど日射遮熱の効果が出やすい傾向は、タワーマンションにも当てはまります。
他の対策との違い

内窓(二重窓)は断熱・防音の効果が最も高く、補助金の対象にもなります。一方で費用は高く、FIX窓やサッシ形状によっては設置できません。開閉と掃除の手間が増えること、搬入経路やエレベーターの養生調整が必要になることも、全戸展開のハードルです。
ガラス交換(Low-E複層ガラスなど)は性能を根本から改善でき、補助金の対象です。ただし共用部分の改修として総会決議・計画修繕での実施が原則となり、全戸となると費用規模が大きくなります。
遮熱フィルムは短工期で遮熱効果も高い工法ですが、複層ガラス・Low-Eガラス・網入りガラスでは熱割れのリスクがあり、こちらも熱割れ計算を実施したうえでの可否判断が必要です。ロール幅の制約から、大判ガラスでは継ぎ目も出ます。
節電ガラスコートは、室内側だけで完結し、継ぎ目が出ず、外観をほとんど変えず、居住したまま短時間で施工できる点が特徴です。耐久年数15年以上で貼り替えが不要なため、長期修繕計画に載せたときの総額を抑えやすくなります。ただし補助金の対象外で、ガラスの種類によっては事前確認が必要です。
費用と補助金の考え方
窓の断熱改修には国の補助制度があり、2026年度は「先進的窓リノベ2026事業」が実施されています。対象工事はガラス交換、内窓設置、外窓交換、ドア交換で、補助額の上限は1戸あたり100万円です。補助対象者には集合住宅の管理組合・管理組合法人も含まれ、申請は登録された窓リノベ事業者が行います。予算に達し次第終了で、2026年8月2日時点の申請額は予算に対して約15%と公表されています。
ここは正直にお伝えします。ガラスコーティングはこの事業の対象工事に含まれておらず、節電ガラスコートは補助対象外です。
現実的なのは、両者の組み合わせです。寒さや結露の被害が大きい方位・住戸には補助金を活用して内窓やガラス交換を行い、共用部の大開口部や全住戸の窓には節電ガラスコートを展開する。この二本立てであれば、限られた修繕予算でも建物全体の空調負荷を下げられます。
なお、自治体が独自の助成制度を設けている場合もあり、内容は自治体ごとに異なります。適用の可否は、所管の担当課または各事業の事務局へ事前にご確認ください。
よくあるご質問

Q. 窓ガラスは共用部分ですが、施工できますか?
国土交通省のマンション標準管理規約では、各住戸に附属する窓枠・窓ガラスは専有部分に含まれず、専用使用権のある共用部分として扱われるため、管理組合の承認が必要です(実際の扱いは各マンションの管理規約の定めによります)。
一方で同規約第22条は、断熱など住宅の性能向上に資する開口部の改良工事を、管理組合が責任と負担において計画修繕として実施するものと定めています。管理組合が速やかに実施できない場合は、区分所有者が理事長に申請し書面による承認を受けて実施できるとされています。窓の断熱・遮熱は、規約上も管理組合が主導すべきテーマですが、管理組合の対応を待てない住戸が個別に実施する道も、あわせて用意されています。
Q. ペアガラスや網入りガラスにも施工できますか?
熱割れ計算を実施したうえで可否を判断します。現地調査でガラスの種類と設置状況を確認し、リスクがある場合は施工をお断りすることもあります。
Q. 賃貸住戸やテナントでも導入できますか?
導入できます。透明ガラスへの施工は剥離・塗り直しが可能です。ただし型ガラスなどテクスチャーのあるガラスは剥離できませんので、事前にオーナー様・入居者様への確認が必要です。
Q. 居住したまま施工できますか?
できます。1住戸あたり最短半日で、窓の前に1m〜1.5mほどのスペースを確保していただければ施工可能です。
まとめ
タワーマンションの高層階が暑く・寒くなるのは、日射をさえぎるものがない、窓が大きい、窓が開けられない、大きなガラス面で冷気と結露が生じる、という条件が重なるためです。原因が窓にある以上、空調の設定を変えても根本的な解決にはなりません。
外部足場を組めないタワーマンションでは、室内側から施工できる工法が現実的な選択肢になります。まずは竣工図でのガラス仕様の確認と現地調査から始めてください。ガラスの種類によって施工の可否が変わるため、熱割れ計算を含めた診断が最初の一歩です。
「職人社長の家づくり工務店」さんの動画で、節電ガラスコートをご紹介いただきました。該当箇所から再生されます。
施工事例では、オフィスビル、店舗、医療施設、工場など、窓面積の大きい建物での実績を掲載しています。
施工事例一覧 https://glasscoat-paint.com/cases
参考・出典
- 環境省「断熱リフォームで夏本番も快適に! おうちの暑さ対策のコツ」 https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/kaiteki/topics/20210623.html
- 環境省「窓の断熱リフォームから、暮らしの脱炭素を始めよう」 https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/zc-action30/topics/2022_01.html
- 国土交通省「マンション標準管理規約」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansionkiyaku.html
- 先進的窓リノベ2026事業(公式サイト) https://window-renovation2026.env.go.jp/
- 環境省 環境技術実証事業(ETV) https://www.env.go.jp/policy/etv/
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※本記事に記載の補助制度の内容は2026年8月2日時点の情報です。制度の内容・予算の消化状況・受付期間は変更される場合があり、自治体独自の制度は地域ごとに異なります。適用の可否については、所管の担当課または各事業の事務局へ事前にご確認ください。
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この記事を書いた人
すがや住宅商品のフランチャイズ本部で、技術サポート、リフォームブランド運営、規格住宅ブランドの立ち上げ・運営、研修講師、商品開発、工務店での家づくりサポートを担当。また、工務店の注文住宅づくりでお客様との打ち合わせや、現場を経験。 その後、節電ガラスコートと出会い、現場施工に転身。 暑い/寒いを我慢しない、紫外線攻撃に負けない、そんな住環境を皆様に届けようと日々奮闘。 どんな時も楽しくをモットーに、現場も楽しんでいます。
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